1. 世界を魅了した木版画
世界各国を旅し、雄大な自然をとらえた吉田博のみずみずしい木版画は、アメリカをはじめ国外で早くから紹介され、現在も高い評価を誇ります。イギリスのダイアナ妃や精神科医フロイトに愛されたことでも知られています。日本に生きる画家として、世界に対抗しうるオリジナルな「絵」とは何かを模索し続けた末に生まれた、新しい木版画をご覧いただきます。
2. 版画技法のあくなき探究、
色彩表現の独創性
「帆船」シリーズにみられるように、同じ版木を用い、摺色を替えることで刻々と変化する大気や光を表わしました。複雑な色彩表現のために重ねた摺数の平均は30数度に及び、巨大な版木を用いた特大版を制作するなど、あくなき探究心をもって、独創的な木版画を生み出しました。
「瀬戸内海集 帆船」より 大正15(1926)年
3. 旅と風景
生涯にわたり風景を描き続けた吉田博。その作品は、画家自らが現地に赴き早描きした写生をもとに制作されました。アメリカ、ヨーロッパ、アジアの自然風景から、富士や日本アルプスといった日本の山岳、穏やかな瀬戸内海など、世界百景の制作を夢見た吉田博の版画作品は画家の旅の軌跡を示すとともに、私たちを異なる世界へといざなってくれることでしょう。


ロンドンにあるケンジントン宮殿の執務室で撮影された、故ダイアナ元英国皇太子妃の姿。昭和62(1987)年に刊行された皇室専門誌『Majesty』に掲載されたものです。1987年といえば26歳の頃。少々上目遣いに微笑む、おなじみの表情の背後に見えるのが吉田博の木版画です。右は「光る海」、左は「猿澤池」。ダイアナ妃は1986年に来日した際、迎賓館に画商を招き、自ら「猿澤池」を購入されたといいます。義父にあたるエディンバラ公は、WWF(世界自然保護基金)の活動を通じて吉田博の長男である遠志と親交があり、ダイアナ妃が博を知るきっかけになったのではないかと推測されています。悲劇の死を遂げてから22年。希有な生涯を送った女性が吉田博の木版画をどのように見ていたのか、興味は尽きません。













